胸が小さい人はどうしてるの?

【田原】素朴な疑問ですが、胸の小さい人用のブラジャーがないとしたら、胸の小さい人はどうしてるんですか。

【ハヤカワ】靴と同じです。足のサイズの小さい人は、「ワンサイズ大きいのを買って中敷きを入れてください」と言われますが、下着もショップに行くと、「一番小さいサイズを買って、あとは詰め物で調整して」と言われてしまいます。

【田原】それは大変だ。

【ハヤカワ】女性にも見栄があるので、「ワンサイズ大きいやつでもいい」と言われたら、つい買っちゃうんですよね。でも、これは問題。メーカーは、サイズをしっかり測って自分に合ったものをつけましょうというキャンペーンをよくやっています。でも一方で、「小さい人は詰め物で調整を」ということを公式に言っています。胸の小さい人からすると、「いったい何なの?」っていうのが本音です。

ツイッター投稿で400着を受注

【田原】ハヤカワさんはサイズが小さくて、かわいいブラジャーをつくろうと思った。タイツのときみたいに、すぐつくれたんですか。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【ハヤカワ】下着も最初は手づくりでした。友達と一緒にミシンでつくって、「品乳ブラ」としてツイッターにアップしました。そうしたらすごい反響があって。

【田原】どんな反響があったんですか。

【ハヤカワ】当時、私のフォロワー数は300人前後で、発信力はほとんどありませんでした。それなのにアップしたら1万5000リツイートしてもらえて。でも、最初は批判も多かったですよ。「胸の大きい人のほうが、かわいいブラを選べないのに」とか、「胸の小さいやつに人権はない」と言われたり。人権がないというのは、冗談にしてもひどい。翌日学校を休んでしまうくらいショックでした。

【田原】いい反響もあったんでしょ?

【ハヤカワ】「こういうブランドを待っていた」という声をたくさんいただいて、注文を募集しました。タイツの販売を始めたときは20~30足だったから今回も同じくらいだと思っていたら、400着も来てびっくり。慌てて工場を探しました。

【田原】400着は手づくりできないよね。工場は見つかったんですか。

【ハヤカワ】プリントのタイツのときは、プリントTシャツをやっている工場があるだろうとあたりをつけられたのですが、下着の場合はまったく見当がつかなくて。とにかく都内の工場に片っぱしから電話をかけて、何とか縫ってくれる工場を見つけました。工場を見つけるまで時間がかかって、お客様をお待たせしてしまいましたが、最終的にはきちんとお届けできてよかったです。

【田原】400着を工場に発注するとなると、それなりにお金がかかりますね。

【ハヤカワ】タイツの売り上げをそのまま使いました。それだけではちょっと足りなかったので、資材をコストカットしたり、一部に関しては後払いでお願いしたりして、何とかやりくりしました。

【田原】 「feast」のブラジャーは、一般的に売ってるものと何が違うのですか。サイズが小さいだけ?

【ハヤカワ】大きく違うのは素材です。一般のブラジャーはアンダーの部分が硬くて、肋骨のまわりのサイズを測って合ったものを購入します。でも、私たちのブラはゴムで伸縮するので、サイズが1~2センチ違っても問題なし。細かいサイズは気にしなくていいので、ネットでも買いやすいと思います。あと、人間の体って左右対称じゃない。じつは右だけ大きいとか、背骨がゆがんでいて左右でズレてるという人もいて、そういう人は左右対称の硬いブラジャーだとすごく痛いんです。でも、ゴムだから左右非対称でもフイットしやすい。ここが一番の特徴です。

【田原】デザインはどうですか?

【ハヤカワ】市販のものはシンプルで無難だったり、ちょっと攻めていても、男性の視線を意識したセクシーなものが多い。だから私たちは女子から見たかわいさを追求したデザインを意識しています。そのぶん、男性からはウケが悪いようですが。

【田原】男性と女性じゃ好きなデザインが違うんですか?

【ハヤカワ】違いますね。下着会社の経営幹部って男性が多いんです。そのせいか、結局は男性目線になって、胸を寄せて上げたほうがいいとか、谷間を強調できたほうがいいという発想になる。でも、それって体に無理をさせているわけだから、女の子からしたらしんどいです。