荒れるクラスの子は「周囲がきまりを守らない」と言う

ここに、ちょっと面白い実験調査があります。規範意識に関するもので、自治的集団づくりのプロである上越教育大学教授の赤坂真二先生に教えていただいたものです。

囚人同士の喧嘩が絶えないある刑務所が、道徳向上プログラムを組みました。片方の群にはプログラムを施し、もう片方の群には何もしないという比較対照群での実験です。結果は、意外なことに「両者全く相違なし」。プログラムでどんなに良いこと(規範意識)を学んでも、実際の行動には反映されず改善されないという衝撃の結果でした。

別の調査で、荒れているクラスとそうでないクラスの規範意識を調べたものがあります。すると、どちらの群でも、生徒たちの「規範意識」については有意な差は出ませんでした。クラスが荒れるかどうかは、本人たちの規範意識とは関係がないということです。

では、何が違うのでしょうか。

3.荒れるクラスかどうかは「他者への規範意識」がポイント

荒れるクラス、荒れないクラス。顕著に異なるのは、「他者の規範意識への認識」です。簡単にいうと、荒れるクラスでは、子どもたちが自分をさておき「周りの人はきまりを守らない」と認識していることが多いのです。

ユニクロやキリンビールなど320社がその企業研修や人材教育の手法として採用している「原田メソッド(自立型人間育成)」。それを考案した元大阪市教員の原田隆史先生(原田教育研究所代表)」は、「教師塾」を開いて全国の現場教師の育成をしています。

その育成プログラムの中のひとつ「理想の学級づくり」において、ある調査を継続的に行うものがあります。この調査方法で特徴的なのは、子どもたちに対して「自分はきまりを守っているか?」という質問項目と「クラスのみんなはきまりを守っているか?」という質問項目が設けられている点です(それぞれ4段階・レベルで回答)。

調査の評価は以下の通りです。

(1)自分への評価とクラスへの評価がほぼ一致している(心身状態が安定している)
(2)自分が低くてクラスが高い(自尊感情が低い子ども。「みんなに比べて私なんか……」という自分を責める心理状態)
(3)自分が高くてクラスが低い(他責、攻撃的な子ども「私はいいけど、周りのみんなはダメ」という批判的な心理状態)

どれが「荒れ」に近いかというと、圧倒的に(3)です。

(2)の自尊感情が低い子どもの場合、いろいろな場面でその子どもを認めていくことで対策を立てることができます。しかし、(3)の他責タイプの子どもの場合、「わがまま」「俺様」「お子様」状態になっており、指導をしても受け入れにくいため、なかなか改善されません。