冤罪でも、法廷に「職場仲間」は一人も来ない

30代前半の会社員(現在は無職)が事件を起こす。たとえば万引きだとしよう。初犯だし、出来心による犯行なので、しっかり反省すれば十分更生できそうだ。被告人は潔く罪を認め、被害者への弁償もした。執行猶予がつくのは確実とみられる。ただし、勤務先は懲戒免職となってしまった。

初公判の日。小さな事件とはいえ当事者にとっては人生の大ピンチだけに、罪の意識と将来への不安で心細くなっていることは容易に想像できる。

いまこそ家族や友人の支えが必要な場面。会社ではバリバリ働き、弁護人によれば人望もあったとされる被告人を応援するため、元同僚たちは法廷にきているだろうか。

情状証人として被告人をかばうのは家族や親類、婚約者、学生時代の友人、小さな会社の社長などがいたが、同僚の姿は一度も見たことがない。また、筆者が見てきた限り、被告人の身内や事件関係者を除く一般傍聴人は、ノート片手の法学部生、傍聴マニア、裁判所見学にきた人、傍聴デートをするカップルが大半だ。

同僚の姿がないのは、犯罪者と関わりたくないからだと思う。

結婚式ならさほど親しくなくても出席するが、すでに仲間でなくなった元同僚に有給休暇を取ってまで果たす義理はないのだ。きっとあなたも、よっぽどのことがなければ犯罪者になった元同僚の裁判を傍聴しようとはしないだろう。

例外は事故を起こしたタクシードライバーで、同僚たちが傍聴席を埋めているケースが多く、仲間意識の強さをうかがわせる。あとは、そのスジの人と警察関係。これは被告人が余計なことを言わないようプレッシャーをかける意味もありそうだが……。

いざとなれば会社は従業員を切り捨て、仲間でなくなった途端に同僚は冷たくなる。それがサラリーマン社会の掟だとしたら、あなたは自分の会社愛を見直すべきである。長年にわたって居心地良く働くには愛情を持って接することが大切だが、見返りを期待してはならないのだ。

とくに注意すべきは同僚との関係。労苦をともにしたり、同期や同学年といったつながりもあったりして、仕事仲間という事実を忘れ、強い絆で結ばれた関係だと思い込みやすい。

が、それが錯覚だということは、社会人になって知り合った同僚のうち、いまは別の道を歩む元同僚の何人と付き合いがあるか考えればわかるだろう。

もし、会社以外の人間関係が乏しいようなら、趣味でつながる友人、学友、地元の仲間など、仕事抜きでつきあえる人間関係を作っておくのが急務。あなたがどこで働こうと、どこに住もうと、揺らぐことのない居場所は一生の宝だ。

そう、求められるがままにサービス残業し、「頼りになるね」とホメられて喜んでる場合ではないのである。

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