地方の学生が受験しにくい理由

慶應義塾大の合格者数ランキングは、10年前と比べると大きく変わっている。06年にベスト10に入っていた高校のうち、16年も引き続きランクインしているのは、開成、麻布、東京学芸大学附属、聖光学院の4校のみだ。これらの高校は100人以上の合格者を安定的に出しており、東大の合格実績も高値安定状態。

新たにランクインした高校の合格者数を10年前と比較すると、3位の浅野が68人増、6位の渋谷教育学園幕張が43人増、8位の西が41人増、9位の市川が52人増、10位の豊島岡女子学園が46人増となっている。日比谷と同様にこれらの高校も同時期の東大合格者が増えており、浅野14人→30人、渋谷教育学園幕張26人→76人、西19人→32人、市川6人→13人、豊島岡女子学園14人→41人となっている。

新たにベスト10に入ったのは、地元である1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の高校のみ。慶應義塾大に合格者を出す1都3県の高校自体も増えており、この10年で375校から409校に増え、合格者数全体に対するこれらの高校出身者の割合は、59.3%から72.1%に上がっている。

10年前のランキングには、東海(16位)や高崎(21位)など、1都3県以外の高校も上位に入っていた。東海は16年のランキングでも地方の高校で最上位だが、合格者が21人減って40位に落ちた。高崎は合格者が34人減で58位に下がっている。両校以外にも、61位の岡崎が25人減、68位のラ・サールが30人減、72位の岐阜が16人減などとなっている。

「慶應義塾大は地方試験会場がなくセンター利用方式も導入していないので、地方の受験生が受けにくい。そのため、リーマン・ショックを機に起きた経済不況による地元志向が尾を引いている」(予備校関係者)

慶應義塾大は1都3県以外の高校出身者を対象に、世帯所得など一定の条件をクリアすれば給付型奨学金の予約ができ、合格と同時に受給が決まる「学問のすゝめ奨学金」を用意するなど、地方の学生獲得に力を入れている。しかし、経済状況以前に少子化により子どもを手元に置きたい親の意向などもあり、受験生の地元志向は根が深いようだ。

学部別の合格者数ランキングを見ると、医学部は1位が筑波大学附属駒場で2位が開成。3位には聖光学院とともに東大の理IIIや京大の医学部に多くの合格者を輩出する兵庫の灘が入った。看護医療学部は横浜共立学園、宇都宮女子、愛知淑徳大とベスト3を女子校が占めた。

女子に人気が高い学部では文学部が日比谷、頌栄女子学院、西、雙葉の順。薬学部は豊島岡女子学園、日比谷、女子学院の順で女子校と共学校が上位に。対照的に理工学部の上位3校は開成、聖光学院、麻布といった男子校が占めた。

社会科学系のトップは経済学部と商学部が浅野で法学部は日比谷。学際系の1位は、総合政策学部が成蹊で環境情報学部が洗足学園だった。

今春は大阪大の後期廃止に伴い同志社大や関西学院大の志願者が増えているが、関西の受験生を中心に慶應義塾大への影響も考えられる。定員管理の厳格化がさらに進む影響もあり、トップ私大である慶應義塾大のハードルがさらに上る可能性がある。