難関国立大を併願しやすい受験科目
2016年の慶應義塾大の志願者数は、前年を1445人上回る4万4797人。対する合格者数は、定員管理の厳格化の影響もあり293人下回る9252人で、倍率(志願者数÷合格者数)は4.5倍から4.8倍に上がった。
定員管理の厳格化とは、収容定員8000人以上の大都市の大学で、募集定員に対する入学者数の超過率が引き下げられること。これまでは入学者数が定員の1.2倍以内まで補助金が交付されたが、16年は上限が1.17倍に引き下げられた。入学者数抑制のためには、これまで通りの合格者数を出すわけにはいかなくなったのだ。ちなみに、定員超過率は段階的に引き下げられ、今春が1.14倍で19年には1.0倍となり、併せて定員超過人数分の補助金が減額される。
さらに、16年は推薦入試の導入に伴い東大が後期を廃止したため、早慶の併願を増やす受験生が増えた。そのため慶應義塾大は、倍率だけではなく、入試のレベルも上がったと見られている。
16年、慶應義塾大の高校別合格者数ランキングの1位は開成だった。これで3年連続のトップだが、現役の合格者数に注目すると、浅野、日比谷に次ぐ3位と意外に少ない。この要因について塾関係者は、「現役時代は、東大など難関国立大以外は受けない生徒が少なくないため、現役の合格者が少ない」と説明する。
2位の日比谷が現役のみの集計で開成を上回るのは、男子校の開成に対し、日比谷は共学校なので、現役志向が強い女子が多いことが影響しているようだ。日比谷の合格実績は大きく伸びており、06年との比較では81人増だ。
慶應義塾大の合格者数が伸びる高校は、連動して東大などの難関国立大の合格者数が増える傾向にある。予備校関係者は言う。
「文系学部の入試科目に国語がなく、代わりに課される論文が2次試験対策につながるので、難関国立大を併願しやすい」
こうした背景もあり、日比谷の東大合格者数が06年の12人から53人と4倍以上に伸びている。