トヨタが新型パワートレーン開発

ひるがえって、新型CX-5はどうか。残念ながら、初代に匹敵する登場感には乏しい。

というのも、初代とは違い、製品のすべてを一新したわけではないからだ。初代は、エンジンからトランスミッション、足回り、ボディーなどすべての構成要素を新規に開発し、前世代の製品からの継続をいっさい排除した。そして文字通りのニューモデルを誕生させた。この礎となったのがスカイアクティブ技術だった。

ところが、新型はエンジンやトランスミッションなどが熟成しているとは言え、基本的な機構は初代からの継承になっている。もちろん、自動車という製品は、通常すべてを一新することのほうが珍しいと言える。一般的には、今回のように基本的な機構は前モデルから踏襲しながらデザインをはじめとして他の要素を刷新してニューモデルとするのが常識だ。このほうが製品としての信頼性も確保でき、顧客にとってもメリットが大きい。とはいえ、その分、新型車の登場感には乏しくなる。新型はこの環境をどう克服して市場で戦わせるのか。

マツダの打った手は、デザインの刷新、そしてそれに加えて、新しいボディーカラーを提案することだった。

実は、2012年秋以降マツダのボディーカラーを特徴づけているのは、ソウルレッドという印象的な赤だった。自動車のマーケットの場合、それぞれのモデルについてファンクラブがある。マツダのモデルにももちろんある。しかしこのソウルレッドの場合、この色に消費者が自然発生的にファンクラブを発足させたという。つまり、モデルの垣根を越えた色の“ファンクラブ”だ。

ただし、初代が発売されたとき、このソウルレッドはまだ存在していない。ソウルレッドの登場は、12年11月発売のアテンザまで待たなければならなかった。逆に言うと、初代が市場投入されたとき、ボディーカラーの新規性はそれほどなかった。だからこそ、今回は機構的な新規性の乏しさを補うために新色を投入して登場感を演出するする、という手を打ったとも考えられる。

このCX-5が当初に見せた技術的な新規性・独自性に関連して、マツダにとって好ましくない動きが現れてきている。

その一角がトヨタだ。CX-5の発表のわずか9日前、12月6日に新型パワートレーンを開発したと発表したのもその現れだといえるだろう。

同社によれば、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)によりエンジン・トランスミッションなどを一新し、“思い通り”の走りを追求したという。新しく開発したエンジンは直列4気筒2.5リッター直噴エンジンで、トヨタの発表によると、その熱効率は40パーセント。ハイブリッド車用は41パーセントという数字だ。同社がその開発の着眼点として謳っているのは、排気・冷却・機械作動時などのエネルギーロスの低減だ。新エンジンの仕様を見ると、圧縮比は14に到達している。