ところが、そうはいってもバブルは起こります。新しい評価方法の下で、初めてのバブルとなったのが00年代半ばから後半にかけての「ミニバブル」でした。ミニバブル期には、景気回復への期待感が高まり、金利先高観もあって、住宅需要が増加したのです。しかし、アメリカでサブプライム住宅ローン問題が発生して米国版住宅バブルが崩壊、リーマン・ショックを招くと、その影響は日本の不動産市場にも及びました。

つまり、80年代に起きたバブルと、00年代のミニバブルでは、バブルの質が全く違うのです。ただし、バブル崩壊の理由は共通しています。

それは「急激な金融引き締め」です。最初のバブルのときは、90年から2年近く続いた不動産向け融資の総量規制が、不動産価格を暴落させる引き金になりました。

ミニバブルの崩壊も急激な金融引き締めがその背景にありました。そこで何が起こったのでしょう。図2「首都圏新築・中古マンション価格指数」を見ると、新築マンションは11年末ごろまで下落傾向を続けています。ところが、中古マンションは09年7月以降反転しているのです。

じつは、この引き締めにより、不動産デベロッパーへお金がまわらず、新築マンションの供給はそれまでの3分の1ほどに急激に減りました。一般的な住宅ローン(フラット35)には団体信用生命保険が付いているのでローリスクですし、セカンドマーケットもあるので、買いたい人はそれまで通り融資を受けられます。

ここで新築物件と購入者のギャップが生じました。マンション購入希望者は、自分の欲しい新築物件が供給されないため、中古市場で物件を求めるしかなくなったのです。そこで中古の需給がタイトになり、価格が上昇したというわけです。

いずれにせよ、不動産価格は金融政策に左右される運命にあります。逆の見方をすれば、金融政策の動きを注視してさえいれば、不動産価格の動向もわかるということ。

図3「貸出態度指数と不動産価格指数」を見てください。貸出態度指数とは、日銀短観で発表されるもので、大手不動産業向け融資を指数化したものです。不動産価格は、これと高い相関関係にあることがわかります。

では「今の貸出態度指数はどうか」――じつはリーマン・ショック前の水準を超えるところまできています。不動産価格の頭打ち感もあります。となると、またもやバブル崩壊のシナリオが待っていそうですが、そうはならないでしょう。

現在、日銀のインフレターゲットである「消費者物価の前年比上昇率2%」に全く届かない状況ですから、今の段階で金融緩和をやめるとは考えられません。また銀行も、それまでの頭金なしのフルローンやオーバーローンといった緩い融資実行の方式を改め、銀行自ら査定した不動産の価値に対する融資の割合(ローン・トゥ・バリュー)を、たとえば5割、6割までに抑えるといった形で、リスクヘッジしています。

ただし、不動産を購入する側にも注意が必要です。たとえば、西日本のある県は、この10年間で地価が4割下がりました。50年後には、現在価格の8%になると予想されています。マンションの耐用年数は47年。最後に取り壊す段になったとき、土地の価値が現在の1割にも満たないとすれば、その土地は守られても流通はしないでしょう。

一方、東京は最近10年間で地価が2%上がりました。つまり今後の資産の組み替えのトレンドを考えるなら、地方から東京へ、郊外から都心へ、土地からマンションへとなります。

沖有人(おき・ゆうじん)
スタイルアクト代表取締役。不動産ビッグデータを駆使したビジネス展開を得意とし、富裕層向け相続対策などで、テレビ・新聞・雑誌に出演多数。著書に『2018年までのマンション戦略バイブル』など。
(小澤啓司=構成)
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