「滞在時間」が長くても儲かる理由
これに対してコメダは、滞在時間が長くても客席回転率は高いのです。なぜでしょうか。
「コメダは早朝から深夜までの長時間営業で、ランチタイム、ディナータイムという区分もありません。全時間帯にお客さんにお越しいただくビジネスモデルなのです」(営業部門を統括するコメダ専務・駒場雅志さん)
つまり、コメダの強みは全時間帯での回転率の高さなのです。
まず、多くの店で朝7時から11時まで続く人気のモーニングは、トーストにゆで卵などをサービスしても、慌ただしい平日の朝は、お客さんの滞在時間は他の時間帯に比べて短い。コメダ本部が入るビルの1階にある「コメダ珈琲店 葵店」(愛知県名古屋市東区)はモーニングの時間帯だけで4回転近くするといいます。
コメダには特別なランチメニューも少なく、ランチタイムは他の競合店に比べて突出して強くないのですが、それでも来店客は途絶えません。午後のアイドルタイムや、カフェが苦手な夜の時間帯も比較的強い。長時間営業の全時間帯でまんべんなく客席が回転することで、平均滞在時間の長さという不利を補っているのです。
近年は座席と座席の間が狭い店や、イスの固い店では落着けないと感じる人が増えました。筆者はメディアから取材を受けると「セルフカフェ疲れ」と説明してきましたが、少しぐらい飲食代が高くても自分の空間を確保したい。この思いは広がっているようです。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。著書に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)などがある。