――iPhoneにも「対話型」のAIの機能はある。それでも物理的な製品が必要なのか。

その点は明確に「プロダクトをつくる」と考えてもらっていい。アマゾン・エコーに7つのマイクが付いているように、カメラやマイク、センサー群の構成はロボットにおいて非常に重要だ。マイクやカメラだけであれば、スマートフォンにも内蔵されているが、センサーとしての構成を考えると機能は限定的で、必ずしも十分ではない。

Amazon Echo●音声アシスタント内蔵スピーカー「Echo」。価格は180ドル(約1万8000円)。

これから起きるAIやロボットの普及は、社会基盤を大きく変えるだけのインパクトをもっている。我々がロボット事業を再び手がけるのは、機が熟しつつあるという認識に基づくものだ。企画している製品には、まだ市場が存在しないような、まったく新しいジャンルの製品もある。市場がどんな方向性で発展するかわからないため、「単発」での勝負は考えていない。複数の製品を次々と展開していく予定だ。そうした製品群が、他社製品やサービスも含めてネットワークで連携することで、全体のサービスがより充実していくという「エコシステム」をつくっていきたい。「点」ではなく、「面」で展開していくイメージをもっている。

 

製品群を立ち上げて「面」で展開していく

――アイボがそのエコシステムに加わる可能性はあるか。

アイボは「楽しい」ことを中心につくられたロボットだ。当時、開発担当責任者の土井利忠氏から意見を求められたとき、私は「5年後までに『役に立つ』ものはつくれないと思う」と答え、アイボに「役に立つ」という機能は盛り込まれなかった。

一方、今回は社会基盤そのものが変わるだけのインパクトがあり、「役に立つ」という必要もある。

――「社会基盤が変わる」とは、具体的にどういうことか。

わかりやすい例はクルマの自動運転。一般道の走行までにはまだ時間がかかりそうだが、物流倉庫などではすでに無人の物流ロボットが走り回っている。物流や製造現場から始まり、建築、土木、農業など、ロボットの市場は次々に広がるだろう。

――その中でソニーのミッションはどのあたりになるのか。

そうした変化を「家の中」と「家の外」にわけると、伝統的にソニーが強みを発揮してきたのは「家の中」。いわゆる「BtoC」の領域だ。まだ具体的なことはいえないが、「家の中」も手がけていくことになると考えている。ただし今回は、「家の外」も手がける。すでに、ZMP社とジョイントベンチャーを立ち上げ、BtoB領域でドローンを事業化している。