空き家特措法も取り壊しも解決にはならない
しかも、空き家問題はまだまだ始まったばかりだ。
「2013年10月時点の空き家数820万戸が話題になりましたが、空き家数はこの50年間ずっと右肩上がりに増え続けてきました。そこに最近は多少減ってはいるものの、毎年90~100万戸が新築され、一方で人口は減少。今以上に問題になるのは必至です」。
こうした事態に対処すべく、2015年5月には空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)が成立したが、この法では問題の根本的な解決にはつながらないと牧野氏。
「特定空き家に指定されると固定資産税の減免が無くなるとされたことで、一部には真剣に対処しようと考えた人もいるでしょうが、誰が見てもボロボロ、建物が傾いているなどかなり極端に悪い状態になっていない限り、指定はされません。また、行政代執行で取り壊したとしても、その費用を徴収できないケースが多く、このままでは自治体の負担が増えるばかりです」。
それにそもそも、取壊しは問題解決にはつながらない。
「財政破綻したアメリカ・デトロイトで空き家が増加。『30%を超すと地域がスラム化する』と、市はどんどん取り壊したのですが、その結果、空地が増え、逆に治安が悪くなった。取り壊すだけではダメなのです」。