『仕方なく放置』が生む三重苦不動産
だが、それだけの危険がありながら、放置される空き家は増える一方だ。
「空き家を放置したままにしている人へのアンケートによると、多くの人は良かれと思って放置しているのではなく、仕方なく放置していると回答しています。具体的には施設に入っている親が帰ってくる時のためや、親の思い出が詰まった家だから処分できないなど。地方では仏壇を含め、家財道具が多くて処分しようにも大変過ぎて手が付けられないというケースや、売ろうとすると世間体が悪いと親族から文句を言われるなど。そこでとりあえず、帰省時に宿泊するためにそのままにしておこうかということになるのです」。
だが、放置された空き家は前述したように、あっという間に劣化。貸せない、売れない、住めないという三重苦を抱えた不動産になってしまう。
そうなってから慌てても、もう遅い。今の時代、更地にしても売れない場所が多く、相続税として物納しようとしても現金優先で家は受け取ってはもらえない。行政に寄付しようとしても、文化的な価値が高い、あるいは公園にできるほど広大であるなど、特殊な事情がなければ、まず無理。相続放棄という手もあるが、その場合にはすべての相続財産を放棄せねばならず、家以外の財産も手放すことになる。
仕方なく放置しておくことがその後の選択肢をどんどん狭めていってしまうわけだ。