中国とロシアが制裁の抜け穴になっている

北朝鮮の核実験に対して日米韓と国連安保理はすぐさま非難声明を発表した。国連安保理は北朝鮮の4度目の核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対して、3月の時点で北朝鮮に対する制裁強化決議を全会一致で採択している。日本はさらなる制裁強化を安保理に働きかけているようだが、これまでの決議同様、効果のほどは疑わしい。安保理決議があるのだから加盟国は決議に従わなければならない。しかし北朝鮮に対して「なんちゃって制裁」しかしていない国が、中国とロシアである。常任理事国が一国でも反対したら安保理決議は成立しない。つまり中国もロシアも北朝鮮への制裁に一応賛成しているわけだが、まじめに制裁する気はない。なぜか。

北朝鮮は核開発疑惑とIAEA(国際原子力機関)の査察要求に反発して03年にNPT(核兵器不拡散条約)を脱退しているが、そもそもNPTに加盟せずに核開発をやっている国がある。インド、パキスタン、イスラエルである。インドとパキスタンは「5大国のみに核保有の特権が認められているのは不平等」とNPT批准を拒否して核実験を行ってきた。イスラエルは核開発疑惑を肯定も否定もしていないが、フランスの協力を得て200発ぐらいの核弾頭を持っているのは公然の事実だ。

「欧米はNPTを批准せずに核開発しているインド、パキスタン、イスラエルには制裁しないではないか。アメリカはインドの原発開発の手助けまでしている。これはダブルスタンダードではないのか」

こういう割り切れない思いが中国やロシアにはある。北朝鮮の後ろ盾になってきた立場上、金正恩に「自制しろ」とはいう。半島の非核化は大事なテーマだから、国連決議にも一応賛成はする。しかし、実力行使までして北朝鮮を制止する気にはならないのだ。

欧米先進国は国際法を持ち出して中国の海洋進出やロシアのクリミア併合を非難するし、CO2の排出規制など環境問題では新興国の成長に足枷をはめようとする。それに対して「自分たちが成長していた時代は好き勝手をやっていたくせに」という反発心が急成長してきた新興国にはある。国際社会で足並みを揃える必要があるときには、そうした感情を理解したうえで策を講じるべきだろう。

中国やロシアが北朝鮮制裁に本気になれないのは、経済的理由もある。中国遼寧省南部にある丹東市は北朝鮮と国境を接する街で、北朝鮮との交易で成り立っている。鴨緑江に架かる橋は物流のトラックや通勤の人や車が行き交って大変な交通量だ。中国は人件費が高騰して競争力を失ったといわれるが、人件費が10分の1の北朝鮮の人々を使えばまだいけるということで大勢雇っている。中国政府の悩みの種は東北3省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)で、石炭と鉄鋼の街が多いのですっかり寂れきっている。北朝鮮との交易、労働力が途絶えたら、経済状況はさらに悪化する。だから中国政府としては見て見ぬふりをするしかないのだ。

一方のロシア。極東ロシアの最大の問題は人口だ。中国の東北3省で1億5000万人いるのに、極東ロシアは650万人しかいない。ゆえに極東ロシアの人々は中国に乗っ取られることに強い恐怖感を抱いているが、モスクワは遠くて声が届かない。そこで北朝鮮の人々を大量に密入国させて農村や工場で働かせている。メキシコ人がリオ・グランデ川を渡って密入国してアメリカの南の州で働いているようなもので、貴重な労働力として地域に組み込まれている。やはりロシア政府も見て見ぬふり、である。いくら欧米や日本が国連安保理を動員して北朝鮮に制裁圧力をかけても、中国とロシアが抜け穴になってしまうわけだ。