一律1割程度の削減では累積債務の解消など無理
累積債務をゼロにするためには、プライマリー・バランスを実現したうえで借金を返していかなければならない。毎年20兆円ずつ返しても約45年かかる。しかし日本の人口動態図を見ると、45年後の2055年には81歳の人が一番多くなっている。現役世代が働いて借金を返していくという前提では、45年ローンは現実的にありえない。返すなら10年ぐらいで一気に返済してしまわないと、それ以降はもう絶対に返せない。
百歩譲って借金返済のスタートラインであるプライマリー・バランスまで持っていくには、現在の歳出から赤字国債発行分の44兆円を削らなければならない。44兆円の削減というのは、国債の利払いと償還費を合わせた国債費が約20兆円、社会保障費が約27兆円だから、これを一切合財やめるという金額である。
今の調子で国債の利払いを続けていたらプライマリー・バランスなど実現できない。かといって国債の利払いをやめたら、かつてのアルゼンチンのように政府がデフォルトした瞬間、900兆円もの累積債務が炸裂して国民の金融資産は吹っ飛ぶ。
個人が保有する国債の残高は33兆円しかないから、国民は自分が政府の赤字をすでに負担しているのだ、という感覚はないが、国債を買い支えてきたのは国民が銀行や郵貯や生保に預けた金融資産。デフォルトすればそれが一瞬で蒸発するのだ。
ということで国債の利払いをやめられないとなれば、プライマリー・バランスには届かない。財政再建派の谷垣禎一自民党総裁が3年前の総裁選で「3年でプライマリー・バランスに」とさかんに主張していた。最近それを言わなくなった理由は、どう計算しても到達できないからだ。