「君はたしかに、若くて色男で、繊細で、ライオンみたいに誇り高くって、若い娘のように優しい。悪魔からしてみると、なんともおいしそうな御馳走だ。おれは若者のそんなところが大好きだ。ただ、あと高等政治の考察を二、三学んでほしい。そうなりゃ、世の中をありのままに見ることができるようになる」

バルザックの小説『ペール・ゴリオ』にはヴォートランという悪党が登場する。この男は、社交界でのし上がることを夢見る青年を唆そそのかし、資産を持つ娘を誘惑させる。そのときの台詞がこれである。

誰にでも自尊心はある。これを踏みにじれば、明智光秀を侮辱したことで悲劇的な最期を遂げた織田信長のように、手ひどい報復を受けるだろう。逆に自尊心をうまくくすぐれば、相手をコントロールすることもできるのだ。

(構成=面澤淳市)