「人は褒めとくもんですなあ」

フランス文学者の河盛好蔵さんは、澄ました顔でいったものだ。サドの紹介などで知られる澁澤龍彦が、若いころの仕事を河盛さんに褒められた話を後年になってからエッセイに書いた。それを読んだ僕が氏に報告したときの反応だ。

澁澤が気負いこんで訳したジャン・コクトーの『大胯びらき』は文壇から完全に無視されたが、ひとり河盛さんだけが「たいへんな名訳だ」と絶賛したのだ。

(構成=面澤淳市)