ここで、職場で個人の強みを発揮すること、つまり、従業員に「自分らしい働き方」を認めることは実際に可能なのかどうか、という問いが生じる。

英レディング大学・ヘンリービジネススクールの研究者たちは、VIA-ISを用いて、職場で最も強く発現される強みと、逆に最も発現されない強みとを割り出し、それらの強みが組織や職場の要求とどの程度一致するのかを分析することで、この問いに関する1つの考察を導き出している。

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図1:職場で必要とされる強みと自分の強み

図1では、欧州における30の官民組織に勤務する60人の中高年層の管理職を対象に、まずVIA-ISテストを個別に実施し、それから同テストにおける「徳性に基づく強み」の概念に関して全員に説明した後で、次の3つの質問を投げかけている。

1つ目は、それぞれの強みが職場でどの程度発現されていると思われるかという質問だ(図1左欄)。その結果、職場では、「誠実さ」「判断力」「大局観」といった強みが発現する頻度が比較的高いことが判明した。

2つ目は、組織または職場で要求される強みと、個人が本来持つ強みとの間でどのような一致または不一致が見られるかという質問だ(同中央欄)。「誠実さ」「判断力」といった強みではやはり高い一致が見られるが、「忍耐力」などの強みでは中程度の一致が見られることが示されている。

3つ目は、職場においてその強みをもっと使うように求められているか、それともあまり使わないように求められているかという質問だ(同右欄)。例えば、自分の強みと要求される強みとの一致の度合いが同じく中程度とされる「思慮深さ」と「寛容さ」という強みで見てみると、前者はさらに強く求められているのに対し、後者は職場ではあまり発揮しなくてもよいと考えられていることがわかる。

このような研究結果より明らかなのは、一概に「強みを発揮する」とはいっても、その発揮の仕方は特定の状況によって異なる場合があるということだ。ポジティブ心理学では、自分本来の強みを特定すると同時に、その強みを自分の持ち場でどう活かしていけばよいのか、その方法を身に付ける実践的なトレーニング法も提供している。