イノベーションとプロモーションの統合が勝利の要因

グラフを拡大
クックパッドの売上高営業利益率推移(2005~11年4月期)

クックパッドの事例のおもしろさは以下のような点である。

まず、製品開発のアイデア創造段階ではなく商品使用における消費者の知識創造に焦点を当てている。そのことと関連するが、第二に、新規の製品創造より既存製品に手を加えない用途革新に焦点を当てている。

第三に、使用場面の革新を通じて目指しているのが、交換価値(販売価格)の向上ではなく使用価値の向上である。レシピに関する新しいアイデアの発掘や種類の豊富化を通じて利用者にとっての使用価値向上を目指しているのだ。

第四に、料理専門家ではない素人による知識創造を重視し、さらにそれを意識的に可視化しようとしている。専門家は知識の豊富さに加えてその人独自の視点、考え方があるがゆえに専門家と呼ばれる。

それに対して一般の消費者の嗜好、考え方は揺れ動く。クックパッドは後者の「消費者の動く嗜好」から生み出され、集計化されることで姿を現す「群衆の知恵」を浮かび上がらせようとしている。

その点で同社の消費者に対する姿勢はオープンである。それが第五の特徴となる。マーケティングの教科書でよく登場する「顧客の囲い込み」はそこでは見られない。誰でもいつからでも投稿できるし、他社商品を組み合わせてもかまわない。

またどんな使い方や改変をすることも認められる。そこでは斬新なアイデア、絶えず変わる時代の気分を反映できるように多様性を絶えず確保するごとく消費者に対してオープンな姿勢が貫かれるのである。