「意味(用途・役割)の進化」経営を推進する7つのポイント

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することが必要だ。

全体最適を図る詳しい進化プロセスは、既に上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(3)の「意味(用途・役割)の進化」に取り組んだ白鳳堂の事例から、自社商品に新たな意味(用途・役割)を見つけ、全体最適を図りながら進化していったポイントを7つ抽出する。

(1)「自社商品の意味(用途・役割)」見直し、新たな高付加価値市場に注力する

書道筆という過去の「意味(用途・役割)」でなく、白鳳堂は自社の強みを発揮しながら「商品に新たな存在価値」を発揮できる市場として、高級化粧筆の領域に資源を集中化した。

(2)プロフェッショナルたちの助言に耳を傾ける

白鳳堂は業界のプロフェッショナルたちと交流して彼らの助言に耳を傾け、化粧品業界の動向を収集して、事業活動に反映した。同社商品をプロが認めたことで、生活者を魅了する商品としての優位性を発揮していった。

(3)海外メーカーとの直接取引をテコに、同業他社のOEMを開拓

白鳳堂は卸に依存した販売体制から脱却するため、直接OEM契約を結べるように奔走し、海外メーカーに的を絞って交渉し成約に結びつけた。この取り組みが他の化粧品メーカーから注目され、さらなる新規開拓に結びつけた。

業界の古い商習慣を打破して成長するには、国内ルールに縛られない海外企業との直接取引を突破口にして、新規取引先を開拓するというプロセスが見えてくる。 

(4)機械化でなく、「製造工程を細分化する人的生産方法」で、付加価値を守りながら量産化に取り組む

職人による製造プロセスをおよそ80に渡る工程に細分化し、1つ~3つの工程をひとりが担当する分業制に転換。手作業による付加価値を守りながら量産化する方法を、白鳳堂は考案した。

「量産するには、機械化が必要だ」とする旧来発想を覆した点に注目して欲しい。またこの方法は人材が流出しても、製造ノウハウが簡単には流出しないメリットも生みだしている。

(5)OEMと自社ブランドのダブル戦略で、生産量と付加価値を担保

直販する自社ブランドの利益率は高いが、販路と顧客が限定されるため売り上げ規模は限られる。他方、OEMの利益率は下がるが、納入する企業数が多いので販売量は多くなる。

白鳳堂は自社ブランドとOEMの長所と短所を踏まえ、ふたつの事業を並行して行うダブル戦略を採用し経営を推進している。自社ブランドで付加価値とブランド価値を高め、OEMの量産によって売り上げ規模を拡大するという見事な経営手法だ。

(6)化粧情報専門ポータルサイトとの協働で知名度を向上させ、ネット直販に必要な情報資源づくりに取り組む

ネット直販で顧客を増やすには、ネット上で話題をつくり、知名度と認知度を高めることだ。白鳳堂は化粧情報専門のポータルサイトと協働して商品開発を行い、自社商品をヒットさせた。これによりネット直販に必要な情報コンテンツが生まれ、女性たちに自社ブランドが知られる資源につなげた。

(7)自社ブランドを成功させるには、対面販売チャネルとネット販売の両方を押さえて、相乗効果を狙う

自社ブランドを直販して規模を拡大するには、付加価値の高いリアルの対面販売チャネルで評価を獲得し、そこで得た評価を情報資源にしてネット直販につなげるというプロセスを踏むと効果的だ。リアルの顧客接点と実績づくりが、バーチャルでの評価と売り上げにつながるわけだ。

酒井光雄(さかい・みつお)
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。
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