稼ぐことより大事なもの、それは……
設立当初から、僕にはある仮説がありました。それは、お金を稼ぐチャンスがあったとしても、メンバーの多くはそれにはがむしゃらにならないのではないか、ということです。案の定、金銭的報酬には貪欲にならないメンバーがほとんどでした。これまで大小さまざまな事件やトラブルが勃発してきましたが、お金をめぐる問題というのはほとんど生じていません(そもそも、お金の動きがまったくありませんが……)。
しかり、それよりもはるかに面倒くさいエネルギーが渦巻いていることが分かってきました。なんというか、とんでもなく“ムキ”になるのです。
それは、「立場」でした。
自分が属する組織やコミュニティの中で、とにかく「いい立場」になりたい。そのためには、時にはお互いを激しく攻撃し、時には非情になり、そして時にはすっかり逃避してしまったりします。
「立場」とは、個人の社会的ポジションを決定づける肩書きやステータスのようなものです。そして「いい立場」には、「あの人は役に立つよね」とか「あの人は正しいね」といった役割や評価が与えられます。
悲しいかな、立場は相対的なものなので、全員が「いい立場」にはなれません。つまり、あるコミュニティにおいては一種の椅子取りゲームのようなものであって、自分が「いい立場」になれないのであれば、立場の危うい人を攻撃し、「悪い立場」に引きずり落とそうとすらする。もしくは、「悪い立場」になりそうな人がいたならば、それを徹底的に証明しようとする……。そんな力学が働いてしまいます。