付加価値税は「人々を欺く税金」!
欧州の高福祉・高負担は日本国内でも頻繁に取り沙汰されるが、米国はどういった税体系となっているのか。大枠の話として、直接税と間接税の比率は8対2、直接税への依存度が非常に高いのが特徴だ。さらに、米国は連邦国家として日本でいうところの消費税(海外の付加価値税)は採用していない。米国が採用している州税(小売売上税)を消費税・付加価値税と混同している議論をいまだに見かけるが、米国の州税と消費税は全く違うタイプの税金である。
州税は消費者から小売り店が税金を預かり、それをそのまま納税する「単段階」の方式であるのに対して、消費税・付加価値税は流通に関わる全ての事業者が、つまり生産→加工→卸売り→小売りの全ての事業者が、自分が仕入れの段階で支払った消費税・付加価値税と、商品の販売の際に受け取った消費税・付加価値税を相殺して納税するという「多段階」の方式である。前者の場合、後者と比較して、単純であるがゆえに不正が少なく、事務処理も簡素で事業者の負担が少なくて済む。
米国はなぜ消費税・付加価値税を採用しないのか。付加価値税について、実は今回の大統領選の共和党の候補者であったテッド・クルーズ氏とマルコ・ルビオ氏の間で白熱した議論があった。特に、マルコ・ルビオ氏が、「付加価値税は人々を欺く税金である」とレーガン元大統領(故人)がかつて述べたエピソードを紹介して話題にのぼったことがあった。
ルビオ氏が持ち出したのは1985年2月21日の記者会見の中での質疑応答の内容だ。その主張を把握すると同時に、消費税・付加価値税に対する米国の考えとはいかなるものかを認識していただくのに、丁度良い材料でもあるため敢えて回答部分を全文記載したい。
当時、一部で浮上していた消費に対する課税について、それを実施するつもりなのか? という記者の質問に対してレーガン大統領は次のように述べた。