なぜ、医師は就業不能保険に加入するのか?
繰り返しになりますが、ひとり暮らし世帯でも、そうでない世帯でも、「世帯主」が病気やケガで働けなくなるリスクはゼロではありません。そしてちょっと興味深いのは、そうした事態に備え、私たちの就業不能保険を買ってくださる「特定の職業」の人がいるということです。
それは、医師や看護師の方々です。
就業不能保険加入者の職業割合を見ると、8.8%が医療業、6.8%が情報サービス業(ソフトウェア・情報処理 など)、5.0%が総合工事業(土木・建築・舗装・リフォーム工事 など)などとなっています。
あるドクターは、なぜ就業不能保険を買われたのですか、との私の問いにこう答えました。
「出口さん、それは、私たちは毎日患者さんを見ているからです。瀕死の患者さん(男性)が病院に運ばれてきて、一命をとりとめた。駆けつけた家族の皆さんは安堵しています。『よかった、無事で』と。でも、働ける状態ではない。住宅ローンは残っているし、子どももまだ小さい。残念ながら、その後、家族が(経済的にも)苦しむ様子が目に浮かぶのです」
こういう話を伺うと、前述の「障害状態に陥る確率」の数字の意味がより重く感じられるのです。個人的な意見ですが、僕は新社会人の皆さんや、20、30代のひとり暮らしの皆さんが最初に買うべき保険は就業不能保険だと考えています。
出口治明
1948年、三重県生まれ。72年京都大学法学部卒業、日本生命入社。92年ロンドン事務所長、95年国際業務部長、98年公務部長。2006年生命保険準備会社ネットライフ企画株式会社を設立、同社社長に就任。08年生命保険業免許を取得、ライフネット生命保険社長に。2013年6月より現職。最新著に『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 (I古代・中世編、 II近世・近現代編:新潮社)など。