なぜ、IT・情報通信業界は女性の離職が少ないか?
▼分岐点2【働きやすい職場環境であると共に、やりがいが持てる職場環境か否か】
第1子出産後に同じ会社で就業継続をした女性としなかった女性の職場環境を比べると、「格差」が見えてきました。
●「希望すればいつでも有給休暇を取得することができた」
●「遅れて出社したり、早めに退社することが柔軟にできた」
といった勤務時間などに関する項目で、就業継続した女性の方がはるかに上回っています(図表2)。
第1子出産後の就業継続には、勤務時間などにかかる柔軟性の有無が影響しているといえます。さらに、就業継続をした女性の割合が多い業種と少ない業種を比べると、就業継続をした女性の割合が高い上位2業種は、以下の通りでした。
【就業継続をした女性の割合が高い2つの業種】
IT・情報通信……90.4%
インフラ*・官公庁……86.7%
*電力・ガス・鉄道・エアラインなど
逆に、就業継続をした女性が最も少ない業種は、
【就業継続をした女性の割合が低い2つの業種】
食品・農林・水産……40.0%
繊維・アパレル……45.0%
IT・情報通信が上位である理由は、在宅勤務などが浸透していることが理由として考えられます。
しかし、高学歴女性にとっては、働き続けられる職場環境であるだけではなく、もうひとつの要素が重要であることが調査結果から浮き彫りとなりました。もうひとつの要素とは、やりがいです。
やりがいが持てるかどうか。
第1子出産後に同じ会社で「就業継続をした」女性と「しなかった」女性の自分の能力やスキルを活かすために働く意欲の変化を比べたところ、いずれも「第1子出産を出産する前と比べて、特に気持ちに変化はなかった」と回答した女性が半数を超える結果となりました。
結果的に第1子出産後に、同じ会社で就業継続をしなかった半数以上の女性も、実は自分の能力やスキルを活かすために働く意欲を持ち続けていたことがうかがえます。
ヒアリングのなかでは、こんな声が聞こえてきました。
●「子育てをしていると、職場で十分に活躍の機会が与えてもらえない」
●「女性の先輩の昇進状況を見ると、現在の会社で働き続けることに不安を感じてしまう」
そうした理由で、勤めていた企業にある意味“見切り”をつけてしまうケースが少なくないのです。それらの女性達の表向きの離職理由は、「仕事と家庭の両立が困難」となっており、離職をする本当の理由が企業側に伝わることはありません。働きやすい環境であることに加え、やりがいが持てる職場に勤めているか否かが両立の分岐点の2つ目といえます。