「つまり、毎日新しいファイルを新規作成してからネタ出しをしたり、作品作りにとりかかるのです。だから、ポメラの画面の表示領域はパソコンに比べ狭いわけですが、文章が長くなってスクロールが煩わしいと感じることもありません」

小説のネタ出しをしたり、本編を執筆するときだけでなく、打ち合わせでも活用している。

打ち込んだテキストデータをパソコンに取り込んでからの作業は、プリンタで出力し、その紙に赤字(修正)を入れ、ワープロソフトで修正するということの繰り返し。

「小説の本編を書くうえでは、出力した紙で修正している時間が一番長いんです」

DM20を購入して以降、仕事の打ち合わせの際も、ポメラでメモをとるようになった。

「以前は、打ち合わせ内容を大学ノートに手書きでメモし、それをパソコンで入力し直していました。これがけっこう面倒くさかった」

小説を作る流れと同様、ポメラで打ち込んだ打ち合わせ内容はパソコンへ持っていき、ワープロソフトで整理して紙に印刷する。

「打ち合わせ内容も客観的に見たいので。たとえば、パソコンの中で全部のことをやろうとしている人の考えって、どうしても似てくる。ある意味、客観性を失い、ほかの可能性を考えなくなり、視野が狭くなる。印刷したものが一番客観的に見やすいと思うんです」

羽田圭介
1985年、東京都生まれ。明治大学商学部卒業。2003年「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞しデビュー。『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞受賞。ほかの作品に『不思議の国の男子』『ミート・ザ・ビート』『「ワタクシハ」』『隠し事』『メタモルフォシス』などがある。
(谷本 夏=撮影)
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