市場が多様化した今「シナジスト」は必須
では、なぜ今「第3の案」というシナジーを求めるパラダイムやスキルが必要なのでしょうか。それは、市場や社会の環境がこれまでとはまったく変わってしまったからです。私たちは、この変化について写真を比喩的に使って説明しています。(図を参照)過去を表す写真は、水面が非常になだらかです。市場が穏やかで、企業が何らかの価値やソリューション(解決策)をつくって提供すれば、市場はそのまま受け入れてくれた時代です。それに対して、現在を表す写真は激流です。市場は多様化し、激しく変化しています。まさに「個」の時代となり、一人ひとりのニーズに細かく対応していかなければ、企業は生き残れない状態になっています。
リーダーシップのあり方も、大きく変化したもののひとつです。かつてのリーダーはメンバーに対して号令をかけ、メンバーはまっすぐリーダーのほうを向いて、リーダーに従うだけでよいとされていました。言う通りにやりさえすれば、しかるべき方向に向かって、しかるべき速度で進むことができたのです。しかし、激流の時代である現在は、一人ひとりが自らの中に方向性を見いだして、水しぶき一つひとつ、つまり多様化するニーズに対応していかなければ、同じ方向に向かって船を漕いでいくことさえできません。
それなのに、一生懸命昔のやりかたで進もうとしている組織が少なくないのが現実です。人材開発において、「多様性(ダイバーシティ)」が大きなテーマになっているのはこのためです。もはや、「シナジストになれたらいいな」というレベルではなく、ならなければならない時代だということです。