死ぬ前に妻がやってみたかった仕事
妻はがんになるまで、技術職の派遣社員として働いていました。いまでもたまに、この仕事を在宅で受けることがあります。それなのに妻が、前職の半分にも満たない時給の手芸屋でのパートを選んだのは、不思議でなりませんでした。
たしかに週3日、1日7時間労働の条件で、その仕事を探すのは難しいものがありますが、それなら在宅で仕事を積極的に受けるほうがいいのではないか、と思ったのです。これなら身体がつらくなっても、すぐにベッドで横になれ、身体を休めることができます。
このことを妻に提案してみると、「もうこの仕事をすることに興味がない」という答えが返ってきました。また、「多忙期になると長時間にも及ぶことがめずらしくない仕事なので、体力的に無理」と判断してのことでした。そして、「死ぬ前に趣味に関する仕事がしてみたかった」という思いが強かったのです。
妻の趣味は手芸で、展示会に出店して売るほど好きで、生き甲斐になっています。そのことを考えると、手芸屋でのパートは、妻にぴったりといえます。実際、このパートをすることで、「少しでも多くの人に手芸を広めたい」ともいっています。先日、手芸に関するスキルアップ研修に行き、帰宅してからも研修で使ったテキストを楽しそうに読み返していたくらいです。
それでも妻の身体のことを考えると、調子が悪くなるようなら、すぐに辞めてほしいと思っています。せめて週に2日、1日3時間くらいのパートなら、生き甲斐につながって免疫力が上がるかもしれない、と思えますが、いずれにせよ、根本的な問題は、もっと私が稼がなければならない、ということです。取り返しがつかないことにならないよう、一刻も早く解決しなければならない問題なのです。