歴史をしっかり学んで、現代に生かす

【三宅】そういう話も、われわれはまったく知らない。

【鈴木】やっぱり、すぐれたところは学ばなければいけません。フランスでは、そのために高校の教員の仕事量7%を注いでいるというんですから、その分教員も多い。それぐらいかけても歴史の大事なことだということです。なぜそうなったかというと、それによって、学ぶことの面白さを生徒が感じるからだと聞きました。フランスも1850年頃は暗記中心だったそうです。しかし、その弊害が問題ではないかという大論争があって、現在のようになっていった。ナポレオン三世の少しあとぐらいの出来事ですよ。

【三宅】日本は遅れること160年余り。その差は大きいですね。

【鈴木】だけどやっぱり歴史という教科は大事で「みんな、あるとき、あるところで同じような課題に直面し議論があるんだな」と私も改めて認識したわけです。だから歴史を学ばなければいけません。しっかり学んで、現代に生かすということです。

ちょっと余談になりますが、まさにマルクスが年『共産党宣言』を発表したのが1848年です。つまり、19世紀中盤というのはそういう時代なんです、思想や哲学が社会の進むべき方向を考えていた。資本主義が、あるいは大量生産システムが非常に盛んになるなかで、物質的豊かさ、一方で人間の疎外というこの光と影がかなり出始めてきて、そのことを巡って大議論がありました。

そういう議論に耐える人材を養成するという議論の試行錯誤をすっ飛ばして、日本はそこで出してくれた結論をあとはキャッチアップして明治以降の国づくり、教育をしてきたたわけですけど、今度は日本が世界史・人類史のパイオニアにならなければいけない。いわば“未知との遭遇”です。新たな時代、未体験の文化と渡り合っていく。それは、歴史を学ぶというよりも、史観を養うということでしょう。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
関連記事
大学入試が変わると本当に日本の教育は変わるのか
ハーバードと日本の大学入試の大きな違い
「35人学級」とは誰のために必要なのか
「ニッポンの教育の副作用」しゃべらない、考えない
大学の入試改革をすれば、英語教育は絶対変わる