商社の多くは業績好調期に年功色を払拭する賃金制度改革を実施しているが、月給が下がっても資源バブルの影響による賞与高騰で、給与が下がったことを自覚できない社員もいた。総合商社の人事担当者は「業績低下により、年収を支えていた高い賞与が減り、年収の大幅減に直面する社員もいる」と指摘する。
メガバンクをはじめとする銀行は公的資金注入後、賃上げできないまま相対的に給与の減少傾向が続いていた。メガバンクを中心に公的資金完済後から年収も上がりつつあったが、企業の設備投資の抑制や株安などの影響を受けて減益となり、一転、年収減となった。
また、市況の影響を直接受ける海運業界も軒並みダウンしている。08年までは業績拡大を受けて年収は上昇していたが、商船三井は59万円減となり、日本郵船、飯野海運、川崎汽船は前年度の1000万円台を割り込んだ。とくに川崎汽船は162万円減の886万円に落ち込んでいる。
かつては年収トップグループに位置していた石油業界はエネルギー革命の途上にあり、先行きも厳しい。原油の需給に左右される一方、代替エネルギー分野で成長を確保できるかが鍵を握るが、近年は年収の地盤沈下が続いている。辛うじて1000万円を超えるのは東燃ゼネラル石油のみであり、昭和シェル石油、コスモ石油ともに落ち込み、コスモ石油は801万円と800万円割れが目前に迫っている。
唯一、堅調なのが製薬業界である。医薬品の特許切れ続出という、いわゆる“2010年問題”を抱えるが、医療費高騰や診療報酬制度を背景に年収もそれほど変化はなかった。エーザイ、アステラス製薬は1000万円を超え、第一三共、武田薬品工業も若干の増減はあるが他業界と比べると安定している。
※すべて雑誌掲載当時