“引かれ者の小唄”のことわざを思い出す

4年ほど前、大手電機機器メーカー(正社員3500人)でリストラが行われた。数百人もいる営業部に、平均年収900万円を受け取る40代の社員が150人近くもいた。本人たちから聞く限りでは、給料分稼いでいるとは言い難かった。

40代の社員のうちの数人は、「不当な行為を受けている」として労働組合ユニオンに助けを求めた。この数人は、同じ40代の社員でありながらも、上層部から認められ、リストラになっていない人たちをこう批評した。

「彼は~だから……」「あいつは~だから……」

例えば、「彼は○○大学を卒業し、本部長の息がかかっているから……」「あの男は、関西の支社にいるときに、本部長にかわいがられていて……」。

いずれの言い分も、同世代でがんばり、生き残る社員らを称えるものではない。むしろ、けなすものだった。「あいつが会社に残ることができるのは、上の者に気に入られたから……」「ゴマをすったから……」と言わんとしているようだった。決して、自分のことを謙虚に省みる姿勢はない。

彼らはユニオンに正式に加入し、ユニオンの役員とともに、会社の人事部などと団体交渉をした。数か月に及ぶ激しい交渉の末、「解決金」と称して、数百万円(推定350~450万円)を受け取った。そのうちの3割ほどを、ユニオンが「成功報酬」として得た。

知人から、数人は「再就職で苦労をしている」と耳にした。中堅の企業に転職したものの、そこでもわずか1年で辞めさせられた者もいるという。

「あいつは~だから」を口ぐせにする人をみると、“引かれ者の小唄”ということわざを思い起こす。

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