【A】「里山暮らし」を始める際、初期投資として必要なのは、いうまでもなく土地と家の購入代金だ。馬場さんのケースは、8700坪の土地に建物(母屋と納屋)が付いて「ちょっと高級な外車が買える程度」の価格。都内でマンションを購入することを考えたら破格の安さである。建物は、一部の床の張り替えとウッドデッキの増設だけで、そのまま使用。居抜きだったので、調度類や洗濯機・冷蔵庫などの大型家電もそのまま使っている。
ランニングコストとして最も大きいのが、東京湾アクアライン(現在、ETC普通車で往復1600円)を使って東京と南房総を往復する交通費とガソリン代。その他、農機具のメンテナンス・燃料代もかかる。
「2地域居住を始めた当初は往復6000円でしたが、房総半島側は土地が安いので、差額を考えたら十分ペイすると判断しました」
生活費は東京で暮らしていてもかかるので、基本的にはプラス・マイナス・ゼロ。日用雑貨は東京とさほど変わらない値段だが、畑で採れた新鮮な野菜や庭に生えている果実(柿、栗、川野夏橙、梅、枇杷など)、裏山で採れるタケノコや山菜などがあるほか、冷蔵庫代わりに利用している「道の駅」では良質な野菜が安価で購入できる。ご近所の農家からのいただきものも多く、近くの海で釣った魚が食卓に並ぶこともある。
「野良仕事や四季の移ろいを感じる楽しみや、山や海で過ごす時間など、南房総での暮らしで得られるアクティビティを東京で得ようとしたら、結構な投資が必要だと思います。それを考えたら、お金にはかえられない価値があると思います」