大人が変われば、まちも変わる
【若新】一方で、スタート時には賛否両論が渦巻きました。なかには「田舎の小さなまちがあんな提案を受けても、うまくいくはずがない」なんていう批判も。でも、それは的外れだと思います。まちの力は、規模の大小ではない。鯖江には以前から独立心や変化を受けいれる姿勢があって、JK課を活かせる市民主役の土壌がありました。
しかも、鯖江市の職員には柔軟な方が多かった。これからのまちづくりは、「大人と子ども」、「プロと素人」といった関係性の境界を超えていくことが大切だ、という理念をしっかりと理解して取り組んでくださいました。
【牧野】批判を受けて、かえって職員が奮起したようですね。「JK課」というネーミングへの批判に対しても、「だったら、JKという言葉の世間のイメージを、高校生が抱く明るいものに変えればいい」という気持ちがありました。秋葉原などでいわゆる「JKサービス」の問題が摘発されて世間が騒がしくなったときも、なぜこのプロジェクトに取り組むのかという市の考えをすぐに公式発表しました。発表の文章は職員が書いたものですが、僕の考えがしっかりと反映されていて、うれしかったですね。
JK課で一番変わったのは、職員だと思います。それまでは、女子高生の意見を聞いて施策に反映させることなど考えてもいなかったはずです。政治に無関心な若者に、意見を求めても無駄――。そのような先入観があったと思います。
ですから、彼女たちから次々と意見が出るのを目の当たりにして、目からうろこだったと思います。彼女たちは、「おいしい」「かわいい」「楽しい」といった感覚重視で提案してくれました。100人の若者がコスプレして遊びながらまちを掃除する「ピカピカプラン」なんていうのもあります。内容は一見シンプルですが、職員からは絶対に出てこない発想です。楽しければ、みんな参加する。まちづくりにおける本当の主役は誰なのか――。職員は埋もれていた市民感覚の大切さを感じたのではないでしょうか。
【若新】彼女たちからいろいろな意見が出たのは、なんでも自由に発言できるJK課の雰囲気をつくれたからですね。彼女たちにしてみれば、思っていることを口にしただけで、特別なことをしているという意識はなかったかもしれません。ただ一方で、職員のみなさんには、大人が「指示しない」「批判しない」「押し付けない」ことを徹底してもらいました。彼女たちのどのようなアイデアに対しても、まずは受けいれて、そしてやってみるというのがルールです。
「大人が変われば、まちも変わる」。これがJK課の大切なコンセプトです。彼女たちがなんとなく口にした言葉にも、大人がちゃんと耳を傾けて一緒に行動できたからこそ、次々とアイデアが続いて、実現していったのだと思います。
(後編につづく)