ピンチの時ほど強さを発揮

現在、ホンダはピンチに立たされていると言ってもいい。主力車種「フィット」ハイブリッドの度重なるシステム不具合、タカタ製エアバッグ搭載車の大量リコール、販売不振による目標台数の下方修正、おまけに業績は同業他社が円安を背景に高収益を上げるなか、ホンダは完全に蚊帳の外。まさしく踏んだり蹴ったりといった状態が続いている。

ただ、ホンダの場合、ピンチの時ほど強さを発揮すると昔から言われてきた。1990年代前半も、ホンダは販売不振で業績が低迷し、当時好調だった三菱自動車に吸収合併されるのはないかと業界関係者の間で話題になったが、94年に「オデッセイ」を発売して一転した。それまでになかった新しい車ということで大ヒットし、ミニバンブームの火付け役になったほどだ。

また、2000年代終わりには、ホンダの軽自動車が存亡の危機にあったが、2011年に「N-BOX」を発売するや否や大ヒット。2012年度から2年連続で軽自動車販売台数のナンバーワンに輝いている。

このようにホンダは1つの車種をきっかけに大きく変わって来た歴史がある。日本本部長を務める峯川尚専務執行役員もS660について「ホンダのブランドイメージをつくるアイコンのようなモデル」と話しており、低迷する国内販売の起爆剤にしたい考えだ。販売店の様子を見ると、S660はその可能性を秘めていると言っていいかもしれない。

関連記事
ホンダ「N BOX」誕生の軌跡
なぜベンチャー魂はいまも健在なのか -ホンダ
ホンダ「N-ONE」(ターボ付き)がなぜ、女にウケたか
ホンダ、社長交代で“一人負け”を脱せられるか?
トヨタが燃料電池車に大きなパッションを注ぐ理由