風向きが変わったのは、難病の子どもの支援を騙った街頭募金詐欺事件の最高裁判決からだ。従来は募金者1人1人の個別の被害に対してそれぞれ立件が必要だと考えられてきたが、最高裁は「包括一罪」、つまりまとめて1つの罪と認定した(最高裁平成22年3月17日)。被害をまとめれば被害金額が大きくなり、そのぶん量刑を重くできる。詐欺犯への威嚇効果は十分だ。
ただ、奥村弁護士はこの判決に疑問を投げかける。
「街頭募金詐欺を何とかしてほしいという社会の要請を受けて、刑訴法の原則がねじまげられた印象です。この考え方が、他の犯罪にも都合よく使われるおそれがある。法律家としては、そこが心配です」
募金詐欺の被害者から見ると、立件されやすくなったり厳罰化されるのは歓迎だ。しかし、それが捜査機関の恣意的な運用につながるとしたら喜んでばかりもいられない。募金詐欺をめぐる捜査や判決がどうなっていくのか、今後も注目だ。