日本の社会保障はやりすぎだ
【田原】もう一つの不安が財政問題です。いま日本は1000兆円の借金がある。GDP比でいうと、220%。アメリカは60%、ヨーロッパでもっとも悪いイタリアでさえ120%です。
【宮内】小泉内閣のときにはかなり真剣に取り組んで、歳出・歳入の「ワニの口」が閉じかけましたよね。ところが、また民主党と自民党が放漫財政をやって、開いていっている。
【田原】橋爪大三郎と小林慶一郎が『ジャパン・クライシス』という本を出しました。彼らが面白いことを書いていた。いまは1941年の夏の状況、つまりアメリカと戦争したら負けると決まっているのに誰も言い出せなかったときとよく似ているというのです。
【宮内】おっしゃるとおりですね。危機感を持っているのは一部の政治家や財務省くらいで、あとは怖くて見たくないという状況になっている。
【田原】宮内さんはCEOをお辞めになって自由になったのだから、ガーンといわなきゃいけない。
【宮内】いや、まだいろいろ仕事がありまして(笑)。だけど、若い人にツケを押しつけているわけで、これは何とかしないといけない。
【田原】彼らの本には、「消費税は34%にしないといけない」と書いていました。これはどうですか。
【宮内】10%なんて論外ですよ。フランスは23%ですから、日本も25%以上は必要でしょう。一方、社会保障もやりすぎです。お金を持っているお年寄りは、国から介護してもらうなといいたいですね。国から介護してもらって、死んだときは1人平均3000万円残しているなんて、そんな馬鹿な話はないです。社会保障にお金を使うなら、少子化対策に使ったほうがいい。そのほうがより日本のためになります。
1935年、兵庫県生まれ。58年、関西学院大学卒業。60年ワシントン大学でMBA取得、日綿実業(現・双日)入社。64年オリエント・リース(現オリックス)入社。70年同社取締役、80年代表取締役社長を経て、2000年代表取締役会長。03年取締役兼代表執行役会長。14年6月、代表執行役会長の職を離れ、同社シニア・チェアマンに就任。12月、新刊『グッドリスクをとりなさい!』を小社より刊行。
田原総一朗
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。