奈良雅弘氏が分析・解説
最終目的は同じ「人を動かす」でも、それが「気持ちに訴えかける」ことによってである場合、何が大切なのだろうか。
人の気持ちに訴えかける際の第一のポイントは、相手の気持ちを正しく把握することである。一方的にメッセージを発しても、相手には迷惑なだけだ。言葉だけでなく、ちょっとした仕草や表情などにも目配りし、相手が今どんな気持ちなのかを読み解く努力が不可欠である。
もう一つは「実(じつ)」があることだ。うわべだけの言葉で、相手の気持ちは動かない。言葉と行動が違っていては、むしろ悪感情を生む恐れさえある。最終的には人格の問題になるが、誠実であることが、最終的には「伝わる」を生むのである。
林氏は、第一のポイントを、自身の営業活動の実践談を通してわかりやすく教えてくれている。「営業=押し」というイメージは今なお健在だが、相手の気持ちにきちんと目を向けさえすれば、力を抜くほうがむしろ効果的なのだと氏は語っている。本人の言葉にある通り、確かに「柔の道」の極意を聞いているようだ。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。