ほとんどの家庭は医療費10万円以上

医療費控除の効果の確認で使うのは、源泉徴収票の「(2)-(3)」だ。(2)から(3)を引いた金額(課税所得)が「所得税の速算表」の税率のどこに当てはまるかを見れば、概算額がすぐにわかる。

たとえば、医療費から10万円を差し引いた金額が1万円(医療費控除額)だったとしよう。すると、所得税率が5%の人(課税所得195万円以下)なら1万円の5%、つまり500円が所得税の確定申告で還付される。加えて、住民税は課税所得に関係なく一律10%だから、1万円の10%である1000円が翌年の住民税から減額されるので、確定申告によりおトクになる税金は年間で合計1500円となる。

同様の例で、所得税の税率が20%の人なら、所得税で2000円の還付、住民税で1000円の減額があり、両方で3000円分のおトクになる(ここでは所得税の速算表の税率の後にある控除額は気にしなくて良い)。

また、不妊治療やがん・先進医療は高額になることが多い。こういうケースはかかる医療費が高い分、税金の還付額も高くなる。例えば、不妊治療などで100万円を使った人なら、100万円から10万円を差し引いた90万円が医療費控除額になり、所得税の税率が20%の人なら、所得税で18万円、住民税で9万円、合計27万円もの税金が安くなる。

つまり、医療費負担が高ければ高いほど、そして税率が高ければ高いほど、医療費控除で家計が助かる度合いも高まるのだ。(もちろん、医療費がかからないのが一番であるのは言うまでもないが……)

厚生労働省の資料(平成22年度)によれば、一人当たりの年齢別の年間医療費を見ると、30歳未満は9万円未満だが、30~34歳10.3万円、35~39歳11.3万円、40~44歳13.0万円、45~49歳16.2万円、50~54歳20.5万円、55~59歳26.0万円、60~64歳34.6万円とどんどん増えていく(70歳以上は60万円以上)。

3~4人の家族単位で考えると、自己負担3割でも10万円程度にはなるだろう。医療費控除に該当しているのにもかかわらず確定申告をしないのは本当にもったいないのだ。