これだけでも話題になったが、チームくまモンは第二弾の作戦を開始する。

「くまモンが名刺配りの仕事を放り出して失踪してしまった。見かけた人はツイッターで目撃情報を寄せてほしい」と、知事自ら緊急記者会見を開いて呼びかけたのだ。

さらによしもと新喜劇の舞台に蒲島知事、「宣伝部長」のスザンヌとともに出演。これがテレビ中継されたのをきっかけに、くまモンの知名度は跳ね上がり、やがて全国のゆるキャラを対象にした人気投票「ゆるキャラグランプリ」で優勝する。

宣伝効果は半年で6.4億円!


写真左:熊本の名産、球磨焼酎 写真右上:県産トマトを使った焼きそば。東京銀座のアンテナショップでも購入できる。 写真右下:2013年7月、くまモンの英国工場訪問を記念して生まれた「くまモンMINI」。販売はしていない。

熊本県内の企業に対してはキャラクター使用料を無料にしたこともあり、くまモンを使用した商品の売り上げは12年だけで293億円以上にのぼり、いまも熊本県のブランド推進課には1日700件以上の申請がある。広告宣伝効果は10年9月から11年3月の半年間だけでも6億4000万円。

これだけ数字を上げていながら、成尾さんは「いまの熊本は“くまモン頼み”になっている」と危惧する。

「先日も、(熊本県)人吉市の鰻屋さんに“人吉にもくまモンを呼んでよ”と言われたんです。でも小山さんの考える『くまもとサプライズ』は、県民一人ひとりがサプライズ体質になっておもてなしをしようというもの。鰻屋さんなら、たとえばうな重のお重の底に、10個に1つくらいくまモンの顔と“ラッキーだモン!”ってセリフを書いておく。それもおもてなしの一つだと思うんです」

とっさにこんなアイデアが出てくるとは、成尾さんも立派なサプライズ体質である。

「僕たち公務員は商品の売り上げが上がっても給料が上がるわけじゃない。自分たちのアイデアや企画が形になって、みんなに喜んでもらうことが生きがいです」(成尾さん)