火山観測がなければポンペイと同じ運命

今回の噴火は御嶽山だけに留まらない、と火山学者は考えている。というのは、3年半前の東日本大震災の地殻変動と関係があるからだ。

地球科学には「過去は未来を解く鍵」というキーフレーズがある。過去の歴史を振り返ると、「3.11」で起きたマグニチュード(以下Mと略記)9の巨大地震が発生すると、数カ月から数年以内に近隣にある火山噴火を誘発する事例が多数ある。

たとえば、20世紀以降の全世界で、M9クラスの巨大地震は6回起きたが、すべてのケースで地震の数日もしくは数年後に震源域の近くで噴火が発生した。つまり、地震によって地盤にかかる力が急激に変化した結果、マグマの動きが活発化したのである。

「3.11」以後の状況は、9世紀の日本とよく似ている。すなわち、東北地方で起きた巨大地震の後から、火山活動が活発化した記録が数多く残っているのだ。

日本列島は「大地動乱の時代」に入った

東日本大震災は、平安時代の西暦869年に起きた貞観(じょうがん)地震ときわめてよく似ている。この地震から2年後に秋田~山形の県境にある鳥海山が噴火し、46年後には青森~秋田の県境にある十和田湖が大噴火した。九世紀の日本は特異的に地震と噴火の多い時期だったが、「3.11」以後の日本列島も同様の「大地動乱の時代」に入ったと考えられる。

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「3.11」の直後から地下で地震が増加した活火山

実は、東日本大震災の直後から、地下で地震が増加した活火山が20個ほどある(図参照)。日本は世界中の7%もの数の活火山を有する屈指の「火山大国」だ。その約2割に当たる活火山の地下で、何らかの動きが始まった。具体的には、焼岳、乗鞍岳、白山、草津白根山、浅間山、箱根山などの直下で、「3.11」以後に小規模の地震が起き始めたのだ。

幸い、その後はいずれの火山でも地震は減少し、現在まで火山活動に目立った変化は見られない。ところが、今回の御嶽山は、こうした20個の活火山に先駆けて、「3.11」の3年7カ月後に噴火を開始した。よって、他の「噴火スタンバイ」火山も厳重な監視が必要なのである。