次に『日本の歴史をよみなおす』。こちらも「貨幣と商業・金融」「女性をめぐって」「海から見た日本列島」といったテーマ別の章立てで歴史が論じられています。著者の網野善彦は歴史学者ですが、作家的資質もあって文章は読みやすく読者の知的好奇心を引きつけるところがあります。
この本は司馬氏の『この国のかたち』と比較して読むといいと思います。司馬氏は俯瞰的視点から歴史を見るといわれているのに対し、網野氏は民衆の視点、民俗学的視点から歴史を検証しています。
視点の違いによって同じ時代でも印象が変わります。司馬氏、網野氏ともその独特の史観には批判がないわけではありませんが、歴史は人によって解釈が異なるもの。多くの人の著作に触れてバランスを取り、自分なりの歴史観を持つことが大切です。
上記の2冊ではハードルが高い、基礎を身につけたいという方には拙著『日本一おもしろい日本史』。私の講義を書籍で再現したものです。受験対策が前提ですから、時代順に覚えるべきことを記述してありますが、「平安貴族はどんな生活をしていた?」「織田信長の魅力とは?」といった話題を織り交ぜてあり、楽しみながら一通りの知識が身につくはずです。
『この国のかたち(全6巻)』
(司馬遼太郎/文春文庫)
――日本史の教養を深めるには最適。これからの日本人、日本国を考えるヒント満載、大人の必読書。
(網野善彦/ちくま学芸文庫)
――百姓は農民かといった常識を疑う、民俗学の視点から新たな日本史の見方を発見できる。
『菅野祐孝の日本一おもしろい日本史(上・下)』
(野口哲典/日本文芸社)
――名講師の授業を聞いている感覚で知識が身につく。