12年からは、息子の暁彦氏という強力な援軍も得た。新卒で大手総合商社の繊維部門に配属された暁彦氏は、デング熱で倒れた博明氏をタイに見舞った際、父親の事業に将来性を感じて、退社を決意。入社後、半年足らずで父親の会社に転職した。
「将来的には退社して手伝おうかなとは漠然と思っていましたが、父に『来るならいま来い』と言われ、予定より早くなりました。決断は正解だったと思います。主に海外での営業を担当していますが、ベトナムやカンボジア、フィリピン、シンガポールはすでに代理店を経由して販売していますし、インドやインドネシア、アメリカやフランスからの引き合いもある。フランスは女性用のビデがある国ですが、このシャワー式トイレがあれば、ビデとトイレの2つを置く必要がなくなるというんですね。タイのホテルからの受注も増えました。私たちが狙っているのは三ツ星、四ツ星クラスのホテル。簡単に導入可能ですし、シャワー式トイレがあれば日本人の集客にも有利になる。立地の不利もカバーできます」
同社への取材は、和僑世界大会の物産展会場の入り口近くでブースを構え、来場者に自社製品を紹介する暁彦氏の姿を目にしたことがきっかけだ。実にわかりやすい説明だっただけではない。何より、自社の事業に無限の可能性を感じていることが伝わってきた。スマートな物腰と的確な話術の持ち主は、大手商社勤務のキャリアをあっさりとなげうち、なんとも楽しそうにシャワー式トイレの営業活動に勤しんでいた。ここにも、あっけないほど決断が早く、既成概念や世間体に縛られない和僑がいる。