年々人口が減少の一途を辿る日本にいると、「マイナス成長」が当たり前のように思えてくる。しかしながら、世界に目を転じれば、「成長のポテンシャル」を持つ国々が溢れている。タイで、ビジネスチャンスを見つけた人たちを追ってみた。

日本人を引き寄せるタイの磁力

2013年11月22日、23日。30度を超える暑さの中、タイの首都バンコク中心部に位置するインペリアルクイーンズパークホテルは日本人で溢れかえった。彼ら彼女たちが向かった先は、年に1度、和僑(海外で起業した日本人)が一堂に会する和僑世界大会の会場だ。アジアのさまざまな国から集まった和僑の数は約700人におよび、期間中に実施された講演や物産展、大交流パーティーなどに参加したバイヤーや一般入場者も含めると動員数は1000人を超えた。

深センや上海など、持ち回りで開催されてきた和僑世界大会も今回で5回目。過去最高の数字を打ち立てた大イベントが物語るのは、海外で沸き立つ日本人の起業熱の高まりと同時に、タイという国の素晴らしいポテンシャルだ。

1887年に正式な国交を樹立した日本とタイは文化的にも経済的にも深いパートナーシップで結ばれている。日本の大手自動車メーカーは1960年代から製造拠点をタイに置き、家電メーカーも続々と後に続いた。近年は、外食やサービス業の進出も活発化している。

バンコク日本人商工会議所に登録されている日系企業の数だけでも、約1500社。アジア経済危機、反政府デモ、洪水など何度も危機に見まわれながらも、日系企業のタイへの進出意欲に一向に衰えが見られないのは、東南アジアの中ではインフラが比較的整備されていること、東南アジア市場への販路開拓の拠点として機能する立地的条件が高く評価されていること、少子高齢化の波が進んできたとはいえ、15歳から64歳の生産年齢人口比率がASEAN諸国で第2位にあたる70.6%と高いこと。そして、何より、タイと日本人との“抜群の相性のよさ”ではないか。