「60歳から」を見据えて先手を打て
多くの人にとって気が重い試算結果である。何とかならないものか……。ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子さんに助けを求めた。
「実際に老後資金の相談を受けたケースから考えてみると、持ち家がある場合、そんなにムリをしなくてもライフプランニングが可能です」
たとえば都内に持ち家があれば、その家は人に貸して家賃収入を得る一方、自分は熱海あたりに格安の中古マンションを購入して住むという方法が考えられる。一戸建ての家なら、子供が独立したあとに売り出してコンパクトなマンションに買い替え、その差額を老後資金に充当することなどもできる。
むろん賃貸派には適用できないが、このように考えれば、老後のためにムリして貯蓄や投資に励む必要はないということだ。
次に考えられるのは住宅ローンの繰り上げ返済。しかし畠中氏は「教育費のかかる間は無理な返済は禁物です」と釘を刺す。教育費については「できるだけ奨学金を利用すべき。ただ、早い時期に子供とよく話し合っておかないと、将来の返済に行き詰まるおそれがあるので注意しましょう」。
地方の銀行が比較的金利の高い定期預金を扱っているケースがあるので、それも狙い目。ペイオフの上限額1000万円までなら元本は保証される。支店が近くになければ引き出しづらいので、預けっぱなしにしておき複利効果が期待できるという利点もある。
また、勤務先が財形制度を導入している場合、財形年金貯蓄はぜひ利用したい。積み立て時は財形住宅貯蓄と合算して550万円まで非課税となり、年金受け取り時も非課税となる(個人年金等の場合は雑所得となって所得税が課税される)。「50代までに先手を打てるかどうかで、60代以降が大きく変わってきます」(畠中氏)。
さらに、貯蓄を行う場合、発想の転換で励まされることもある。
「毎月5万円貯蓄している人が、なんとか頑張って5万5000円貯蓄したとしますよね。そうすることで、年間10%の利回りを確保したと思うことができるのです」(畠中氏)
なるほど、これなら投資の利回りに一喜一憂しなくていい。やはり節約こそが資金づくりの王道なのだ。