次に、活用可能な税制優遇制度を把握する。会社員ならば確定拠出(DC)年金(企業型・個人型)、自営業者やフリーランスならば個人型確定拠出年金や小規模企業共済などがある。これらの制度は、個人で払った掛け金が全額所得控除の対象になるうえ、運用益が非課税で、受取時にも税制優遇がある。運用商品も通常の投資信託よりも運用管理費(信託報酬)などのコストが低く、購入手数料もかからない。そのため、運用の目的が老後資金ならば、DCでの運用を優先的に考えたい。そのうえで、さらに運用する余裕があれば、NISAを活用する。会社の退職給付制度が厚生年金基金などの確定給付年金で、金融資産を自分で運用する必要があるなら、NISAの活用を検討する。
では、NISAをどう使えばいいのか。DCで、国内外の株式や債券に広く分散投資するインデックス投信を組み合わせて資産運用の中核となる資産をつくっているなら、NISA口座では単一国の株式投信を買ってみる、あるいは配当性向が高い日本株(個別株)を買うなど、リスクを取ってより積極的な投資をする選択肢もある。DCに加入できない場合にはNISAでインデックスファンドやETF(上場投信)などを活用したい。また、NISAは利益が出てはじめて非課税の恩恵を受けるため、なるべく損を抑えたいと考える人もいるだろう。その場合、まずは為替ヘッジ付きの海外債券のインデックス投信などで比較的安定した運用を目指すことも考えられる。いずれにしろ、自分のリスク許容度にあった商品を選びたい。
なお、単一国の投信や個別株は、インデックス投信に比べて値動きが大きくなる傾向がある。そのため非課税期間終了時に利益が出ているとは限らない。購入する際に長期保有か、ある程度利益が出たら売却して非課税の恩恵を受けるのかなどの出口戦略も含め、運用スタイルを決めておくべきだ。
LIFE MAP, LLC代表。投資信託や個人型確定拠出年金、マネープランなどの講師、企業研修も務める。主な著書に『株、投信を買うなら必見! 税金がタダになる、おトクな「NISA」活用入門』など多数。