さらに彼らの強みは、ここぞ、という時の集中力だ。

「日頃の練習では、いかに短い時間内で効率よく取り組めるかを強く意識しています。試合で得点するチャンスが巡ってきた時に、選手にはその集中力のスイッチが入るのです」(福嶋さん)

平日7時すぎ、野球部員は教室に集まり、自習。また、A4ノート1枚に練習に関する反省や課題を書いて毎日監督に提出する。

驚異的な集中力の高さは、勉強でも証明済みだ。

この冬の大学受験では、元野球部員の3年生の多くが、筑波大2人、早稲田大3人など一流大学に「現役」で合格した。

昨年の3年生も国公立と早慶上智、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の5大学)への進学が68%を占めた。

通常、どこの学校の野球部員も受験勉強に本腰を入れるのは、3年夏の地区予選後(7月)。だが、小山台の場合、夏場に学校の最大の行事である運動会などがあるため、勉強1本となるのは9月に入ってから。

つまり、残りたった6カ月で、「合格」を手にするのである。

「1学年が300人弱いますが、定期試験の成績が200番台だった部員も、今回、中央大学法学部に受かりました」(部長・大谷あけみさん)

小山台高校全体でも、ここ7年で国公立・私立の難関大学の合格者が約3倍以上になっているが(この冬は早稲田に29人、慶應義塾に17人合格)、密度の濃い練習をする野球部員は、その躍進に貢献していることになる。

今回の甲子園メンバーでも、東京工業大や一橋大など高いレベルの大学を志望する部員が多い。大谷さんはこう話す。

「甲子園の宿舎に、生徒たちは教科書や参考書を持ち込んで、夜、みんなで1時間弱勉強しています。甲子園で勝つことも大事だけれど、学習習慣も大切。生活(勉強や、学校と自宅での時間)が一番で、野球は二番というのが、伝統です。生活のリズムを壊したくない、ということで勉強時間を組み込んでいます」

さて、勉強と甲子園。二兎を追う、文武両道パワーは炸裂するか。

(堀隆弘=撮影)
関連記事
サッカー高校留学――プロへの登竜門「冬の国立」を目指す3年間費用は540万円
公立中高一貫校の星「ケンチバ」に突撃訪問!
塾長は見た! 合格家族と不合格家族の親子ドラマ【大学受験編】
東大一直線の子、二流止まりの子 それぞれの思考パターン
地元医学部の独占率2割超! 名門公立高校が強すぎる