甲子園で春夏計8回の優勝を誇る大阪桐蔭。とりわけここ10年間の強さは際立っており、春連覇と春夏連覇を達成した2018年の最強世代からは根尾昂、藤原恭大などがプロ入りした。野球評論家のゴジキさんは「かつてのような粗削りな本格派の選手は減ったが、西谷監督の『僕らの目標は甲子園で勝つことであってプロ野球選手を育てることではない』という指導方針はブレない」という――。
※本稿は、ゴジキ(@godziki_55)『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「個の強さ」と「チームの強さ」を両立させた2012年
一発勝負の甲子園に勝ち続けるチームをつくるためには、個の選手の能力に左右されず、トーナメント戦を勝ち抜く戦略など高校野球ならではの最適解が必要となる。
10年以上高校野球のトップを走り続けている大阪桐蔭は、2013年以降(強打の正捕手、森友哉=現オリックス・バファローズが3年生だった世代以降)は、甲子園に勝つための最適解を持ち始めたといえるだろう。
これが、長い目で見た場合、正解なのか不正解なのか白黒をつけるのはナンセンスだ。ビジネスの場面でも、経営者や個人として大成する人とサラリーマンで出世しながら大成する人は、全く別の土俵だ。つまり、高校野球で勝つための指導がプロ野球で活躍することに繋がらないということは、当たり前である。
一番理想的なのは、藤浪晋太郎(現ニューヨーク・メッツ)や森がいた2012年の世代のように、高校野球で勝つために練習をした結果、甲子園春夏連覇を果たし、選手がプロ野球でも活躍することだ。この藤浪と森は、21世紀の高校野球における最強投手と最強打者だったのは間違いない。
藤浪は、2012年のセンバツでは粗削りなピッチングだったため、先制点を与える場面はあったが、夏の甲子園では驚異の大会通算で奪三振49、防御率0.50を記録。内容を見ても準々決勝から徐々に調子を上げていき、準決勝の明徳義塾戦と決勝の光星学院(現・八戸学院光星)戦で完封し、春夏連覇に導いた。