安倍政権は、日本版NSCは先に強行成立させた特定秘密保護法と「セット」だと公言してきた。問題だらけの悪法ではないかという轟々たる批判が巻き起こる中でも成立を急ぎ、強行した理由については、「日本版NSCの発足に間に合わせる必要がある」とも訴えていた。

それが強引な採決に踏み切った真の理由なのかは眉唾ものだし、官僚主導で秘密指定の可能な特定秘密保護法が警察を中心とする官僚組織の権益を大幅に広げるものであるのは明らかなのだが、安倍政権がブレーキを踏む気配はない。同法の成立直後の昨年12月17日には防衛計画の大綱(新防衛大綱)や中期防衛力整備計画と合わせ、歴代内閣でも初めてとなる「国家安全保障戦略」(※1)を閣議決定している。この中で安倍政権は、日本政府が長く堅持してきた武器輸出三原則の見直しを明確に打ち出し、「我が国を愛する心を養う」といった文言まで刻み込んだ。要は「愛国心」である。

加えて安倍首相は同じ日、首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に出席した際、集団的自衛権の行使容認を目指す考えをあらためて強調している。

このほかにも共謀罪創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を今年の通常国会に提出するとの情報が取りざたされ、安倍首相の持論である憲法改正も近い将来の視野に入れているのは確実だろう。

日本版NSC。特定秘密保護法。武器輸出三原則の見直し。集団的自衛権の行使容認。愛国心の鼓舞。共謀罪創設。そして憲法改正……。これらは一連の動きと捉えねばならず、ここから見えてくるのは、内外に認知されてきた戦後日本の国家・社会像を根本的に転換させる目論みである。