大きなリターンを得られる事に集中せよ
素晴らしい未来を切り開き、充実した人生を送るには第2領域に時間とエネルギーを注ぎ込まねばならない。第4領域と第3領域は排除し、第1領域はやむをえない場合に留めるべきだ。この考え方にはほとんどの人が賛同すると思う。
しかし、あなたは第2領域での活動を充分に行っているだろうか。ほとんどの人の答えは「NO」であろう。米フランクリン・コヴィー社の調査によれば、人々は平均で自分の時間の3分の1未満しか第2領域に費やしていない。その理由は緊急軸に振り回され、第2領域の活動が後回しにされるからである。
私たちには日々、さまざまな仕事が降りかかってくる。あらかじめ定められた締め切りに加え、受信トレイに溜まったメールの山への返事。上司から「これ頼む」と振られる横入りの案件……。どれもすぐに対応しなければいけないように感じるものばかりだ。
しかし、それぞれの仕事へ取りかかる前に一度立ち止まり、「これは本当に重要か?」と考えてみなければいけない。緊急軸に振り回されるのはもうやめて、「重要軸」に基づいて行動するように自分の考え方を変えるのだ。
重要であるか否かを判断するには、それをすることで得られるリターンを考えてみるとよい。株式に投資するとき、どの企業に投資すれば最もリターンが大きいかを検討するのは当然である。しかし不思議なことに、普段の仕事や生活でそうした分析をする人は少ない。
「この仕事をすると自分や会社、あるいは顧客にとってどのようなリターンが得られるのか」を考え、大きなリターンを期待できることに集中するのだ。
多くの仕事が発生するなかで、いちいち余計なことを考えていたらすべて処理できなそうな不安を覚える。しかし「緊急だから」「上司から言われたから」といって焦る前に、図3で示した質問を自分に問いかけてみるとよい。緊急だと感じられても実はそうでない仕事はたくさんあるし、急がなくてもよい仕事、余裕のある他人に任せてもよい仕事もある。
そして、重要ではない仕事にはNOという勇気も必要である。それを可能にするためには、職場や周囲の環境に対し、第2領域の活動に集中する重要性を認識させ、組織文化として定着させる努力も必要である。
(※図版は、取材をもとに編集部作成。)
1932年、米国ユタ州生まれ。作家、経営コンサルタント。世界78カ国でリーダーシップやマネジメント教育などを手がけるフランクリン・コヴィー・グループの創始者の1人。著書は『7つの習慣』『第3の案』など。
■フランクリン・コヴィー キングベアー出版
http://www.franklincovey.co.jp/books/