本人たちには気軽な「いたずら」でも、特に食品衛生を巡るトラブルは企業にとって致命的なダメージとなりかねません。厳しい対応は当然でしょう。実際、厳しい対応がされることが広まれば、「炎上」の抑止には効果があります。「バカな行為」のもたらす結果について従業員が正しく認識するようになれば、こうした問題は起きないはずです。この構造は飲酒運転と似ています。厳罰化により、飲酒運転が自分だけでなく、家族や職場も巻き込む危険行為だという認識が広がりました。「バカな行為で職を追われる」とわかれば、状況は変わってくるでしょう。
ただし、一部には行為と結果責任のバランスを欠いた事例も見受けられます。問題を起こした店を閉店させたうえで、従業員に対し損害賠償を求めるようなケースでは、「閉店の責任は、本当にその従業員1人だけのものなのか」という疑問を感じる人も多いはずです。
企業体質が同じなら「バカな行為」は再発
ソーシャルメディアの普及で、さまざまな情報が可視化され、企業の本質が問われるようになっていると感じます。たとえば従業員の「バカな行為」がたびたび報じられるような企業は、管理体制や士気に根本的な問題を抱えている可能性が高いと考えることもできます。従業員の満足度が高い企業であれば、「会社に迷惑をかけてはいけない」と考えて、社会常識に反した投稿は自然と控えるはずだからです。
これは顧客とのコミュニケーションでも同様です。顧客に愛される店舗では、「バカな行為」が行われる恐れは少ないでしょうし、もしあったとしても「一部の非常識な客がやったことだ」と受け止められ、企業自体が袋だたきに遭う可能性は低くなるはずです。
こう考えると、「炎上」を防ぐためにソーシャルメディアを全面禁止にすることは、逆効果になる恐れがあります。いまや若年層でソーシャルメディアを使わない人は少数になりつつあります。表面上、利用を禁止したところで「建前」を制限できるに過ぎません。より大きなリスクは「本音」の部分に潜んでいます。