企業の管理者としては、従業員のソーシャルメディアの利用について、ガイドラインを設けたうえで、利用希望者には届け出てもらう方式を取る手もあるでしょう。「見られている」という感覚が、軽率な行為への抑止力になります。当然、無許可や匿名で発言しているアカウントはリスクが高いといえます。

さらにリスク管理の観点からは、届け出のあるアカウントのなかから、会社公認のものを決め、普段から情報発信を心がけるという手段もあります。誤解によって誤った情報が広まりそうなときには、信頼のあるアカウントから正確な情報発信が行われることで、「炎上」を小さくできる可能性もあるでしょう。

ネットにはポジティブな情報を広める力もあります。たとえば2011年に主演映画の撮られた秋田犬の「わさお」。この犬が注目を集めたきっかけは、08年にあるブログに「イカの町で出会ったモジャモジャ犬」として紹介されたことでした。「わさお」という名前も、このとき、ブログの筆者が名付けたものです。

つまり、ネット発の情報可視化の流れは止められないのです。ネットを遠ざけるのではなく、積極的にネットを活用できる企業ほど、「炎上」にも強くなる。その点を理解してほしいと思います。

アジャイルメディア・ネットワーク社長 徳力基彦
1972年生まれ。NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年、アジャイルメディア・ネットワークの設立にブロガーとして参画。09年より現職。ブログ「tokuriki.com」の運営のほか、年間100回以上の講演も行う。著書に『デジタル・ワークスタイル』、『アルファブロガー』(共著)など。
(新田哲史=聞き手・構成 遠藤素子=撮影)
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