――金融安定化法が施行されても、危機は去らないといわれています。

【外資B】最初はA410ページ程度の法案が、再可決に向けて修正が施されて、450ページの分厚い法案になった。とりあえず、バケツに開いた大きな穴は塞いだけれど、完全に水漏れが止まったわけではありません。金融機関の不良資産をいくらで買い取るのか。その金額次第では、売却に際して金融機関の損失が膨らみかねません。それでなくても体力が失われている。このうえさらに巨額の損失が発生すれば、またマーケットに叩かれるかもしれない。金融機関にとっては、それこそ悪夢でしょう。

【邦銀D】日本円にして最大で75兆円の買い取り資金を投入するといっても、果たして足りるのかなあ。金融危機に対処するには、最終的には税金を使うしかありません。結局は、日本が取った措置と同じように金融機関に優先株を発行させて、公的資金を資本注入するか、一時国有化して公的資金で不良資産を処理する以外にないということですね。そして、下落し続ける不動産価格が底打ちしないことには、金融市場は健全な姿に戻らないでしょうね。

――金融危機はヨーロッパにも飛び火しています。

【外資B】イギリス、ドイツ、スペインなど、ヨーロッパ各国でも金融機関の破綻や大手金融機関への公的資金投入が相次いで、アメリカと同様に深刻な状況になっています。たとえば、9月下旬にヨーロッパの大手金融機関フォルティスの株価が急落し、経営危機に陥った。CEO自らが「破綻はない」といったその日のうちに、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの三国政府が公的資金を分担して投入して救済しています。

アメリカから飛び火したといわれていますが、ヨーロッパの金融機関の経営危機が本格化するのは、時間の問題でした。フランスのサルコジ大統領は、各国政府が協力して、金融安定化のための資金を準備すべきだといっていますが、足並みはそろわない。現状では、経営危機にある金融機関への個別対応が主で、アメリカのような総合的な金融危機対応はできていません。ヨーロッパの金融危機という新たな火薬庫が爆発する可能性も高まっています。