「私たちの世代は『失われた20年』と言われ続けてきたので、世界で闘う仕事をしなければならないという危機感があります。たとえば大手商社に入っても20代は常に新人で、30代、40代から海外の事業にかかわれる――みたいな感覚では遅すぎると、どうしても感じてしまうんです」(関さん)
「若いうちから何かにチャンレジする環境で働きたいと思えばなおさらです。この会社にいると、40代、50代のビジネスマンと話をしなければならないので、常に自分の考えを整理しなければなりませんし、仕事を任されているという実感がある」(林さん)
両親から「大企業に就職してからでもベンチャーにはいける」と何度も諭された大橋さんが、それでも内定を辞退してテラモーターズを選んだのは、こうした同世代の姿に背中を押されたのも大きな理由の1つだった。
「彼らに追いつけなくなってしまってからでは遅い。自分が成長できるかどうかは、会社や働き方、周囲の仲間がどんな人たちかによって全く変わってしまうんだ、と思ったんです」
ところで、ここで紹介した3人に共通するのは――大橋さんがそうであったように――将来的には自ら起業したいという夢を持っていることだ。
大学を卒業後、20代のうちから大きな仕事に携わり、今はまだ小さな会社とともに「成長」を分かち合う。そのようにして多くの経験を積むことは、必ずや自らの社会人としてのキャリアを豊かなものにする――それが学生時代に会社を選ぶ際の彼らの基準だった。
前述のスローガン・伊藤社長は、企業が「自分自身の成長の場」となることを強く求めるこうした学生の目には、従来の日本企業への就職がときに「リスク」にすら映っているのではないか、と分析する。
「特にパナソニックやシャープといった企業が大きな赤字を計上するようになった今、どこにいっても通用する力をつけていかなければならない、という危機感が若者の間で強まるのは自然なことです」
大きな企業ほど就職後にどのような同僚と働くかわからず、配属先も希望通りにいかないという「配属リスク」がある。ゆえに成長が見込めそうな小さな企業を初めから志望することは、彼らにしてみれば極めて合理的な選択でもあるのだ。
●直近2年の新入社員の「東京一工早慶(※)」卒比率100%
社員数12人。本社は4畳半。「外資系の日本支社なんて、日本企業でいう埼玉支店みたいなもの。優秀なやつらこそベンチャーに来てほしい」(徳重社長・写真左下)。「無給でもいいから働かせてくれと頼みました。今も給料は安いし、ほぼここで暮らしていますが、毎日が刺激的です」(一橋大卒、入社3年目の神取弘太さん・写真右下)。
(※)※東大、京大、一橋大、東工大、早稲田大、慶応大。